堺市で増える“簡素な葬儀”──家族葬・一日葬・直葬が選ばれる時代の背景と本当の理由

2025年10月21日

かつて日本の葬儀といえば、「通夜」「告別式」「初七日法要」までを含めた二日間の儀式が一般的でした。
親族・近所・会社関係者など、数十名から百名以上が集う「地域の行事」のような形が長く続いてきました。
しかし今、堺市をはじめとする大阪府各地、また全国でも同じような傾向がみられるようになりましたが“一日葬”や“直葬”といった簡素な葬儀が急速に広まっています。

なぜそのような傾向になったのか。実は「お金をかけたくない」だけが理由ではないことが、実際にご葬儀をされた方々からのお声として聞こえてきています。
価値観の変化、生活環境の変化、そして地域社会の在り方が変わったことで、葬儀そのものの形が変容しているのです。
ひかりグループでは、葬儀の簡素化が進む背景と、今後の葬儀のあり方を丁寧に紐解きます。

葬儀の形が変わった──「家族葬」「一日葬」「直葬」とは

●家族葬とは

家族葬とは、近親者やごく親しい友人だけで行う少人数の葬儀を指します。一般的に10～30名程度で行われ、通夜・告別式を含む二日間形式が多いものの、最近では1日で完結するケースも増えています。

●一日葬とは

一日葬は、通夜を省略し、告別式と火葬を1日で行う形式です。
参列者への案内や食事の準備が簡略化でき、費用・時間・労力を抑えられることから、共働き世帯や遠方に家族が散らばる家庭に支持されています。

●直葬（火葬式）とは

直葬（ちょくそう）とは、通夜も告別式も行わず、故人を直接火葬場にお見送りする形式です。読経や祭壇を省くため、費用を最も抑えられますが、宗教儀式を重んじる人にとっては抵抗感もあるため、選択は慎重に考える必要があります。

なぜ葬儀が簡素化されてきたのかを分析

①　核家族化と「呼ぶ人がいない」現実

堺市でも近年、核家族世帯が増え、親戚同士の付き合いが薄くなっています。
「昔は親戚が何十人も来てくれたけど、今は呼ぶ人がいない」という声も多く、参列者が少ない＝葬儀を小さくするという流れが自然と進んでいる傾向がみられます。ひかりグループでも、お一人暮らしの方のお見送りなどが増えてきましたが、ご家族様ご親族様のご参列が少なくなったのは核家族化の影響だと推測しています。

②　高齢化と体力・時間の負担

葬儀の主な喪主層である60〜70代が高齢化し、二日間にわたる葬儀の準備・対応が負担になっています。
一日葬や直葬なら、体力的・精神的な負担を軽くできるというメリットがあり、体や精神的にも優しい葬儀として受け入れられています。

③　経済的な理由と物価高の影響

近年の物価上昇で、葬儀費用の見直しをする家庭が増加。
従来200万円前後かかった葬儀費用が、家族葬では80〜120万円、一日葬では60〜100万円、直葬なら30万円以下で済むケースもあります。
「質素でも、心を込めて送りたい」という想いが、経済的リアリズムと感情のバランスの間で新しい形を生み出しています。

④　コロナ禍による弔い方の変化

感染拡大期を経て、少人数・短時間での葬儀が定着しました。
その後も「親しい人だけで静かに見送りたい」「リモートで参加できる形がいい」といった意識が残り、簡素葬が“新しい常識”として根づいたのです。

伝統的な葬儀が減少している理由

●「形式」より「心」を重視する時代へ

かつての葬儀では、儀礼や形式が重視されていました。
しかし今の時代、人々は「立派な式」よりも「心を込めた式」を求めています。
特に堺市では、仏教・神道・無宗教が混在し、宗派にとらわれない柔軟な価値観が広がっています。

●「仕事」「距離」「時間」の制約

共働き家庭の増加や都市部への転出で、喪主側も参列側も、長時間拘束される二日葬に参加しづらくなりました。
「日程を1日で済ませたい」「休みが取れない」という現実的な理由が、形式の簡素化を後押ししています。

●葬儀の“地域コミュニティ性”の崩壊

昔は町内会・自治会・親戚一同が支え合って葬儀を執り行う“助け合い文化”がありました。
しかし近年では、マンション化・単身化・高齢化によって、地域の助け合い機能が薄れています。
葬儀を手伝ってくれる人も減り、結果的に「簡素な葬儀にせざるを得ない」という現実もあります。

堺市に見る「葬儀簡素化」の地域的要因

堺市は大阪府内でも特に都市と下町が共存する地域であり、葬儀文化にも独特の変化が見られます。

①　人口構造と都市化の進展

堺市は政令指定都市として約80万人が暮らす大都市ですが、中心部では単身・核家族世帯が急増しています。
一方で、南区や美原区などでは高齢化率が30％を超える地域もあり、「支える人が少ない社会構造」が進行中です。
この人口バランスが、“呼べる人が少ない”＝“小規模葬儀を選ぶ”という傾向につながっています。

②　火葬場の稼働とアクセス事情

堺市には「堺市立斎場」など複数の公営火葬場がありますが、近年は予約の集中や交通アクセスの問題もあり、短時間で完結できる形式（直葬・一日葬）の需要が高まっています。

③　共働き世帯・単身高齢者の増加

堺市は大阪市に近く、通勤圏としても人気のエリア。
しかしその分、家族が別居しているケースも多く、
「親が亡くなったけど、子どもが東京に住んでいる」
「夫婦二人だけの生活で、参列者を呼ぶ人がいない」
といった状況が増えています。
そのため、「シンプルで現実的な葬儀」＝簡素葬が自然に受け入れられているのです。

堺市で選ばれる「家族葬・一日葬・直葬」３つの特徴

形式	主な特徴	費用相場（堺市平均）	向いている人
家族葬	親族中心の小規模葬	約80〜120万円	故人を丁寧に見送りたい家族
一日葬	通夜なし、1日で完結	約60〜100万円	遠方の家族・時間が限られている人
直葬（火葬式）	式なし、火葬のみ	約20〜40万円	宗教儀式にこだわらない人・予算重視