家族がいない人の火葬・葬儀の現状を知る

はじめに
「もし自分が亡くなったとき、葬儀や火葬は誰が行ってくれるのだろうか」──そんな不安を抱える人は、決して少なくありません。核家族化や未婚率の上昇、地域コミュニティの希薄化が進む現代日本では、家族や親族がいない、あるいは頼れないまま最期を迎える人が年々増えています。
本記事では、家族がいない人の火葬・葬儀は実際にどのように行われているのか、その現状と背景、具体的な流れ、そして今後に向けて私たちが考えるべき課題について、葬儀の現場視点を交えながら詳しく解説します。
家族がいない人はどれくらい増えているのか
総務省の統計を見ても、日本では単身世帯が年々増加しています。高齢者の一人暮らしも珍しくなく、身寄りがない、もしくは家族と疎遠な状態で亡くなるケースは、もはや特別なものではありません。
こうした状況の中で増えているのが、**「引き取り手のない遺体」**や、家族不在で行われる火葬・葬儀です。葬儀社や自治体の現場では、10年前と比べて明らかに相談件数が増えているという声も多く聞かれます。
家族がいない人が亡くなった場合の基本的な流れ
1. 死亡の確認と行政への連絡
自宅や施設、病院などで亡くなった場合、まず医師による死亡確認が行われます。その後、親族がいない、もしくは連絡が取れない場合は、**警察や自治体(市区町村)**が関与する形になります。
2. 親族・関係者の調査
自治体や警察は、戸籍や住民票をもとに親族の有無を調査します。しかし、親族がいない、または全員が引き取りを拒否した場合、次の段階へ進みます。
3. 行政による火葬・埋葬(行政火葬)
引き取り手がいない場合、墓地埋葬法第9条に基づき、市区町村が火葬・埋葬を行います。これが一般的に「行政火葬」「公費葬儀」と呼ばれるものです。
行政火葬・公費葬儀とは何か
最低限の火葬が基本
行政火葬では、豪華な葬儀は行われません。多くの場合、
- 通夜・告別式は行わない
- 宗教者を呼ばない
- 最低限の棺・搬送・火葬のみ
といった、極めて簡素な形になります。
費用は税金で賄われる
火葬や搬送にかかる費用は、市区町村が負担します。ただし、故人に預貯金や不動産などの財産がある場合、後日その中から費用が充当されることもあります。
葬儀社はどこまで関わるのか
「家族がいない=葬儀社は関わらない」というわけではありません。実際には、多くの自治体が指定葬儀社や協力葬儀社に業務を委託しています。
- 遺体の搬送
- 納棺
- 火葬手続きの代行
など、現場での実務は葬儀社が担います。ただし、通常の葬儀と比べると、感情面でのサポートや演出はほとんどありません。
無縁仏として扱われるケース
火葬後、遺骨の引き取り手がいない場合、一定期間自治体で保管されたのち、合祀墓や無縁仏として納骨されます。個別のお墓や墓標が建てられることは少なく、「誰にも知られずに眠る」形になるのが現実です。
この事実に、寂しさや不安を感じる人も少なくありません。
生前にできる備えとは
1. 生前契約・死後事務委任契約
近年注目されているのが、死後事務委任契約です。信頼できる第三者や専門家と契約し、
- 火葬や葬儀の内容
- 納骨先
- 行政手続き
などを生前に決めておく方法です。
2. 直葬・小さなお葬式を選ぶ人も増加
家族がいなくても、自分らしい最期を迎えたいと考える人の間では、直葬や家族葬などのシンプルな葬儀を生前に申し込むケースも増えています。
費用を抑えつつ、最低限の尊厳を守る選択肢として、現実的な方法と言えるでしょう。
現場から見える課題と問題点
尊厳が守られているとは言い切れない現実
行政火葬は制度として必要不可欠ですが、
- お別れの時間がほとんどない
- 誰にも見送られない
といった点で、**「人としての最期の尊厳」**が十分に守られているとは言い切れません。
葬儀を「他人事」にしない社会へ
家族がいる人にとっても、この問題は決して無関係ではありません。誰しも、将来は一人になる可能性があります。だからこそ、葬儀や死後のことを元気なうちから考える社会が求められています。
まとめ|家族がいない人の火葬・葬儀は、社会全体の問題
家族がいない人の火葬・葬儀は、行政が支える仕組みがある一方で、課題も多く残されています。ただ「簡素に終わらせる」のではなく、
- どうすれば尊厳を守れるのか
- 本人の意思をどう反映させるのか
を考えることが、これからの日本社会にとって重要です。
もしこの記事を読んで少しでも不安を感じたなら、それは決して特別なことではありません。小さなお葬式、直葬、生前契約──選択肢を知ることが、安心につながります。
最期をどう迎えるかを考えることは、今をどう生きるかを考えることでもある。
そんな視点を、ぜひ一度持ってみてください。

